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「KEN SAKAMOTO EXHIBITION−映画のような未来−」展に寄せて


 今回の個展の動機は、たった一人のために、坂本建さんのクレヨン画を見せたいと思ったことであった。そのような個展があってもいいと思った。
 1976年生まれの坂本建さんは千葉県市川市に在住。現在43歳だが、本格的にクレヨン画を始めたのは40歳の頃だったという。遅いスタートのようであるが17歳の時に画家になることを夢見て美大受験を目指すが大学受験制度になじめず、高校卒業後はフリーターのような生活を送った。それでも何かを探し求め、彷徨する生活の中で、いくどとなくクレヨン画を描きたいという気持ちに襲われ、それをなだめるように、年に数度はクレヨン画を描いたという。坂本さんの心の奥底には、いつもクレヨン画があったのだろう。予想を超えた空虚に通過する日々。しかし、満天の星々の下に導くように、体内に繰り返し流れていく独言がいつの間にか羅針盤となって<そう描くことだ>とクレヨン画を示したのだ。そんな人生の姿が思い浮かんできた。

    ケン5P1015029
  「太陽系外惑星へのプロセス」クレヨン パステル 2019年 

 最初に坂本建さんのクレヨン画を見たとき、なんと無垢な絵だろうと思った。それはツイッターからであった。その坂本さんのツイッターを追って、何枚もの作品を見届けた。クレヨン画とは信じられないほど複雑に塗り込められて地肌が美しかった。そこにはファンタジーがあり、ペーソスあり、ポエジーがあった。
 坂本さんのHPを開く。坂本さんの作品スタイルをスクラッチアートと呼ぶという。スクラッチアートとは、画用紙に2重塗りしたクレヨン画面を上塗りのクレヨンを削って描く絵で、今、大人たちの趣味として流行しているらしい。坂本さんは、自身の作品をスックラッチアートとしているが、趣味的なスクラッチアートを遥かに凌駕していることは言うまでもない。つまり、技法上からこの用語を用いているに過ぎないと思われる。これを裏付けるように、19歳のときに坂本さんは、皮膚感覚に最もフィットする画材がクレヨンだと気づいた。そしてスクラッチアートのような技法でクレヨン画を描いていた。はじめにスクラッチアートがあったわけではない。そして40歳のときに、クレヨンと同様に、皮膚感覚にぴったりとした画用紙に出会い、戸惑いと違和感が消えて、ここから思うように手が動き、一気呵成に制作が進むようになったという。ここで気づくことは、皮膚感覚から画材を選択し、こころの言葉に従って作画しているということだ。こんなところに、無垢な作品が生み出される秘密があるのかもしれない。

  ブロフ
    「スクリーン」 クレヨン アクリル 鉛筆 23.0 ✕ 42.0cm 2019年

 今回の個展のテーマは「映画のような未来」だ。謎めいたネーミングだが、図の「スクリーン」は、クレヨンだけではなく、パステル、アクリル、鉛筆、引っ掻きなどを多用し、おそらく坂本さんの日常から掬い上げてきたシーンを描いたのだろう。そのシーンには雪が舞って、地肌が詩情にあふれて美しい。こんな映画のような魅惑的なシーンが私たちの身の回りにあるのかと改めて気づかされた。中央の黒いドアのような入口が印象的に私を誘う。
 多くの皆さんから堪能いただきたい。
                          佐藤晴夫(Art Coordinator)
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  1. 2019/10/10(木) 09:25:53|
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